インタビュイー:室 智美さん
・鉾田市生まれ鉾田市育ち
・音楽療法×夫婦でカフェの経営
どんなお仕事をされていますか?
二つの柱で事業をしています。
一つ目は、施設や個人宅への訪問、ピアノレッスンなどの音楽療法士としての活動です。健常児だけでなく、発達に課題のあるお子さんやグレーゾーンの子、大人の方まで幅広く指導しています。
また、デイサービスでの介護業務と音楽療法の実施、学校での非常勤講師なども行っています。
二つ目は、カフェ「ぱれっとらいふ」の運営です。地域で音楽療法を普及したい、音楽を通して地域の方々に長く元気に過ごしてもらいたいという思いから、みんなの「居場所」を作りました。
歌声喫茶や誰もが参加できる音楽療法などを開催しています。
音楽療法士とカフェをはじめたきっかけは何ですか?
もともと小学生の頃からピアノをしていて、何か音楽関係の仕事をしたいなと考えていました。
直接的に音楽療法士を目指すきっかけとなったのは、中学2年生で父を癌で亡くした経験です。
病気で入院している人やハンデのある人に音楽で何かできないかと考えていた時、高校1年生で音楽療法士という職業を知り「これだ!」と直感しました。
高校3年生の時には母が統合失調症で入院し、後に亡くなりました。
入院中はずっと母に会えず、その時、音楽で何かできなかったという後悔が強く残り、病気や障がいのある人を支えたい、音楽で役に立ちたいという決意を固めました。
カフェをはじめたのは、施設で働いていた経験からです。施設にこもりがちな方や、外出しづらい環境にいる方々、そしてそのご家族の苦労を目の当たりにしました。
例えば、障がいのあるお子さまが走り回ってしまった場合、お店で迷惑をかけてしまうと思い、外出を控えてしまうご家族もいます。
そんな方々が気軽に外出でき、新しい刺激や人との関わりを得られる居場所を作りたい。障がいの有無、年齢に関係なく、誰もが集い、交流できる場所。
そして、そこに音楽療法を取り入れ、音楽で人々をつなげたいという思いから、カフェと音楽療法を組み合わせた場所を作りました。
大切にしていることは何ですか?
「やってみなきゃわからない」という姿勢です。鉾田でフリーの音楽療法士として活動を始めた時「鉾田じゃ無理だよ」という声をたくさん聞きました。
しかし、無理と言う人は、やったことがないからわかっていない。やらないで後悔するより、やって後悔する方がいい。私はそう思っています。
実際に、音楽療法は最初こそ知らない人の方が圧倒的に多かったものの、認知症カフェなどでも取り入れてもらえるようになり、少しずつ認知度が上がってきました。
周りの反対を気にせず、環境がちょこっと整ったらとにかくやってみる。それが私のポリシーです。
どのような学びがありましたか?
音楽療法を続ける中で、参加者の方々から得られるものの方が圧倒的に多いと感じています。特に高齢者の方からは、私が知らなかった昔の出来事や戦争体験など、本当に多くのことを学ばせていただいています。
また、鉾田での活動を通じて、人とのつながりの大切さを学びました。
コロナ禍で活動が難しくなった時も、お世話になっていたケアマネージャーさんからの声がけで活動を続けることができ、そこから様々な施設からも声がかかるようになりました。
鉾田で音楽療法が少しずつ知られてきたのも、このような人とのつながりのおかげです。
今後の目標を教えてください
音楽療法士としての最終的な目標は、緩和ケアやホスピスで音楽療法を行うことです。自分の親は緩和ケアやホスピスを利用しませんでしたが、自分ができなかったことを、今度は他の方のためにやっていきたいと思っています。
これはとてもナイーブな分野なので、時間をかけて慎重に取り組んでいきたいと考えています。
地域での音楽療法は、歌声喫茶などを通して、様々な年齢層の方に参加してもらえるように活動を広げていきたいと思っています。人々が繋がり、地域がもっと活性化していくことを願っています。
記事を読んでいる方へのメッセージをお願いします
「地元でやりたいことはできない」と思っている方へ。私自身も、最初は鉾田で自分のやりたい仕事ができるとは思っていませんでした。でも、やってみなければわかりません。
たとえお金の面で不安があっても、少しずつ貯めながらやってみるなど、やり方は絶対にあるはずです。「やりたいけどできない」ではなく「1回やってみる」のが大事だと思って私はいまも実践しています。
インタビュアーからの一言
室さんの『やってみなきゃわからない』という前向きな姿勢に、とても勇気をもらいました。地元でできることを見つめ、音楽療法という新しい分野を地道に広めていくその努力は、地域の人々にとってかけがえのないものです。
これからも、様々な年齢層や背景を持つ人々と音楽でつながり、鉾田の地域社会に活力を与え続ける彼女の活動を応援しています!
インタビュアー:鬼澤美妃
▼Instagram
・カフェ&コミュニティスペース ぱれっとらいふ
・音楽療法ぱれっと