花から野菜へ、直売へ。自分らしい農業を切り拓く #7

水上 和寿さん
・鉾田市で農業に従事
・サングリーン旭 生産部会長(2026年5月現在)

花農家の長男として生まれ、「お前が継ぐんだぞ」と言われながら育った水上さん。当初はやらされ感で始まった農業は、震災を機に大きく転換しました。

花から野菜へ、農協出荷から地場スーパーへ。試行錯誤を重ねながら、今では25店舗以上に出荷できるまでに。

日本一の野菜産地・鉾田で、農家として生き残るための経営を模索しながら、新たな施策を繰り返す水上さんに仕事や地元への想いを伺いました!

目次

どんなお仕事をされていますか?

元々は父親が花農家をやっていて、自分は高校卒業後すぐに就農しました。

現在は家族の農園の中で事業部が分かれているような形で、父が花を担当し、自分が野菜全般を担当して統括しています。

現在はブロッコリーやスナップエンドウ、ミニトマト、小松菜、ほうれん草など、時期に合わせて多品目の野菜を作っています。

農業をはじめたきっかけは何ですか?

「農家の長男はお前が将来やるんだぞ」と昔から言われて育ってきたので、正直なところ最初は「やらされ感満載」で始まりました(笑)。

田舎あるあるですよね。

でも、祖父が太平洋戦争終戦後、満州から引き揚げてきて、手作業でこの土地を開拓したというルーツがあります。

機械もない時代に苦労して切り拓いた土地だからこそ、やっぱり守らなきゃいけないという思いが根底にあります。

それが今の原動力になっている部分もあるかもしれません。

鉾田だからこその良さはありますか?

海が近くて農業をやるのに環境がすごく良いことです。

もう少し海側だと塩害がありますが、ここは塩害もなく、海風が来るから夏は涼しくて冬は暖かいんです。

また、鉾田は日本一の野菜産地として知られていますが、そのネームバリューの裏には「農協の販売力の強さ」があります。

生産量が多いからこそ、市場に対して優先的に販売できる強みがあるんです。

とはいえ、ブランド名があるから売れるというよりは、結局のところ「何を売るか」が重要だと考えています。

これまでの大きな挑戦は何でしたか?

一番の転機は、花から野菜への生産へと切り替えたことです。

震災の頃に景気が悪くなり、「このまま花だけを作っていたら生活できない」と危機感を感じたのがきっかけです。

最初は農協に出荷している友人に聞いてミニトマトから始めました。

その後は春菊を作ったり、花の畑を縮小して空いた土地でブロッコリーなど、様々な野菜を作ってきました。

その時に、スーパーへの直売を始めたのも1つの挑戦ですね。

ただ農協に出荷するだけでなく「スーパーの地場野菜コーナーや直売でやったら面白いんじゃないか」と考え、地域のスーパーに伺いました。

今では25店舗ほどに出荷できるようになっています。

今後の目標はありますか?

今考えていることは、直接販売の強化と小玉スイカの生産です。

今は多品目の野菜を作っているので、野菜の定期便(サブスク)のような形や、ECアプリを活用した直接販売にも力を入れていきたいです。

そして今年から試作を始めた小玉スイカがうまくいけば、少しずつスイカに切り替えていくということも考えています。

一般的に流通している野菜は付加価値がつけづらいのが現状です。

果物は美味しければ高値がつきやすく、付加価値をつけやすいんですよね。

そういった意味でも小玉スイカにチャレンジしています。

現在のように多品目の野菜を作り続けるか、それとも特化していくかというのは悩みどころですが、小玉スイカの施策を続けながら考えていきたいと思います。

農業に関する課題は感じていますか?

鉾田に関して言えば、やはり後継者不足はあると思います。

跡取りがいない農家さんがたくさんいます。

ただ、だからといって新規就農者がすぐに入れるかというと、そういう訳でもないのが難しいところですよね。

引退する農家さんがいても、地縁のある近所の人や知り合いに「うちの畑やってくれないか」と声をかけるケースがほとんどだからです。

とはいえ、一つの農家で管理できる圃場の規模もある程度限界があると思います。

どうしても規模を大きくし過ぎると管理が行き届かず品質が落ちてしまう懸念もありますからね。

品質を保てる適正な規模で、持続可能な状態にするのが重要なのかなと考えています。

若い方へのメッセージをお願いします

「地元にはやりたい仕事がない」と思っている若い人も多いかもしれませんが、視野を広く持ってみてほしいなと思います。

仕事から探すのではなく、自分の趣味やライフスタイルから逆算して考えてみるのも一つの手です。

たとえばサーフィンが好きな方であれば、鉾田は適した環境ですよね。

朝サーフィンに行って、そのまま仕事に行くなんてことも出来ちゃうわけです。

なので、まずは自分の生活スタイルとか趣味を踏まえて、もう一度鉾田を見渡してみるとまた違った道が見えてくるんじゃないかなと。

お金の面とかを踏まえると、都会よりも挑戦しやすい環境だと思うので、ぜひそういった視点でも考えてみてほしいですね。

インタビュアーからの一言

「鉾田市といえば農業」そんな鉾田市の魅力を改めて感じたいと思い、今回は水上さんにインタビューをさせていただきました!

季節に合わせて多品目を育てていらっしゃるため、1年を通してお忙しく、ようやくお話を伺うことができた念願のインタビューでした。

後継者不足や就農者の減少は、鉾田市で暮らす中で多くの人が感じている課題だと思います。しかし、水上さんのお話を通して、視点や考え方を少し変えるだけで、鉾田の農業や暮らしにはまだまだ大きな可能性が広がっているのだと感じました。

今回のインタビューが、皆さんにとって地域の農業や未来について改めて考えるきっかけになれば嬉しいです。

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